Snugon MO1第三章:試作と試行錯誤の記録

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本ブログでは、Snugon MO1に興味を持っていただけるよう、特徴や開発ストーリーをお伝えしていきます。

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第1章ではSnugon MO1の魅力的な特徴を、第2章ではそのユニークなアイデアが生まれた背景にある、従来の多ボタンマウスへの課題意識についてお話ししました 

第3章となる今回は、いよいよ「アイデアを形にする」プロセス、すなわち試作と試行錯誤の道のりについてご紹介します。頭の中にあったコンセプトが、実際に手に取れるモノになるまでには、多くの試行錯誤と、時には予想外の壁があるものです。ものづくりのリアルな苦悩をお伝えできればと思います。

一度目の挑戦:紙粘土で模型作り

「5本の指それぞれに2つずつボタンを配置する」というアイデア を形にするため、まず手元にあった紙粘土で最初の模型を作ってみることにしました    

とにかく、各指でボタンを押しやすいように、素直に配置してみよう、と。

…結果、出来上がったのは、なんとも気持ち悪い形状の物体でした(笑) 


見た目の問題だけではありません。すぐに致命的な欠陥があることに気づきました。それは第2章でも懸念点として挙げていた「マウスを持ち上げられない」という問題です    

この最初の模型では、すべてのボタンを上から下に押すことを想定して配置しました。こうすれば内部の基板は平たく1枚で済み、コスト面でも有利だろうと考えたのです 。しかし、マウス側面や上面に指を引っ掛ける部分が全くなくなり、持ち上げ動作が不可能になってしまいました    

これはマウスとして致命的です。この案は、実際の試作に進むまでもなく却下となりました    

二度目の挑戦:より立体的な形状へ

最初の失敗を踏まえ、次は「持ち上げやすさ」を重視しました。縦型マウス(バーティカルマウス)の形状を参考に、より立体的な模型を作ることにしました    

今度は良い感触でした。実際に手を添えてみると、指の配置は自然で、全てのボタンが想定通りに押せそうです。そして重要な持ち上げ動作も、親指側のくぼみと手のひら全体で包み込むように持つことで、スムーズに行えることを確認できました    

「これならいける!」と確信し、次のステップ、3D設計へと進むことにしました    

壁に直面:3D設計の現実

私自身には3D設計の経験がなかったため、専門の機構設計会社様に協力を依頼しました 。模型を元に、PC上で精密な3Dデータが作られていきます。   

しかし、データ化が進むにつれて、模型作りだけでは見えてこなかった問題点が次々と明らかになりました    

1. 複雑すぎる内部構造とスペースの問題

立体的な形状にしたことで、内部に極端に狭い箇所ができてしまいました。ここにマイクロスイッチを配置するのが非常に困難であることが判明しました 
この設計では、本来採用したかったマイクロスイッチではなく、より背の低いスイッチを採用しなければいけませんでした。

 

2. コストの問題(内部機構)

各ボタンのスイッチは、指で押される力をしっかりと受け止め、かつ正しい方向で固定する必要があります。この複雑な立体配置を実現するための内部機構は、非常にコストが高くなることが予想されました 
画像の通り、赤い部分が立体的に基板を固定するための機構で、これが非常に複雑です。また、これに固定される基板も5つに小さく分割し、それぞれ固定せざるを得ない構造になってしまいました。

3. コストの問題(金型)

さらに、この複雑な形状を量産するために必要な樹脂成形用の金型が、最低でも3つ以上必要になるだろう、ということも分かりました。なぜなら、樹脂パーツ数がホイール含めて7つになっていたためです。これは、初期投資が大幅に膨らみます。

内部構造的にも費用的にも、このまま進めるのは難しい。苦渋の決断でしたが、この2つ目の形状案もここで断念し、再び形状の検討からやり直すことになりました    

三度目の正直:形状検討から再出発

振り出しに戻り、3つ目の模型作りを開始しました。今度は、修正のしやすさを考えて油粘土を使いました(後から考えれば、形が残らないのでしっかりと固まる紙粘土の方が良かったと後悔しています…)  
目指したのは、「立体的な持ちやすさを維持しつつ、内部構造を可能な限りシンプルにする」ことです    

2つ目の模型よりは手のひら側の傾斜を緩やかにしましたが、親指側の引っかかりはしっかりと残すことで、持ち上げ動作は問題なくクリアできる形状を探りました 。内部スペースも極端に狭くなる箇所をなくし、スイッチ配置に無理が出ないように配慮しました    

この頃には自分で3D設計がある程度できるようになっていたので、3D設計も自身で行いました。模型を3Dスキャンして、設計ソフトに取り込んで形を整えて行きます。

5本の指それぞれにボタンを配置するというコンセプト上、内部構造が一般的なマウスより複雑であることに変わりはありませんでした  
ただ、必要な樹脂パーツはホイール含めて4つに抑えられ、金型は2つに抑えられるまでに改善できました。
内部スペースも十分に広く設計できているため、内部パーツの配置は困りませんでした。 

3Dプリント試作から量産へ

3Dデータが完成し、次はいよいよ実際の「動く試作品」の製作です。自作キーボードの経験を活かし、基板設計、ファームウェア(マウスを制御するためのソフトウェア)の制作、そして3Dプリンターでの筐体出力を行いました    

初めて手に取った試作品の使い心地は最高でした。持ち上げ動作はスムーズで、10個のボタンが指先に自然に配置され、直感的に押し分けることができます 。ここまでの苦労が報われた瞬間でした。   

基板は基板、ソフトはソフトでもちろん苦悩や試行錯誤はありましたが、改善を重ねてすべて納得の行く状態となりました。

そして、いよいよ量産に向けたステップへと進みます。協力いただける樹脂成形業者様を見つけ、射出成形による量産サンプルの製作に取り掛かりました    

最初は表面加工なしのツルツルしたサンプルです。

結構いい感じです。
ここから、金型の微調整を行い、最終製品に近い表面加工(シボ加工)を施したサンプルを作成しました。

なかなかいいですね!
さらに、カラーバリエーションとして白色のサンプルも製作しました。

こちらも素晴らしい質感!

粘土をこねるところから始まり、3D設計で直面した壁、そして3Dプリンターでの試作を経て、ようやく量産サンプルにたどり着きました。ものづくりは、まさに試行錯誤の連続ですね。

こうして形になったSnugon MO1ですが、そのユニークな形状とボタン配置を実現するためには、さらに多くの技術的な工夫が凝らされています


次回の第4章では、「Snugon MO1の技術的な特徴や工夫」と題し、ハードウェア、ファームウェアの両面から、このマウスを支える技術について、より詳しく解説していきます。

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