Snugon MO1第二章:従来の多ボタンマウスへの不満から生まれたアイデア

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本ブログでは、Snugon MO1に興味を持っていただけるよう、特徴や開発ストーリーをお伝えしていきます。

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前回の第1章では、Snugon MO1の基本的な特徴と魅力についてお伝えしました。

さて、今回からは数回にわたり、Snugon MO1がどのようにして生まれたのか、その開発ストーリーをお届けします。

第2章となる今回は、開発の原点、すなわち「従来の多ボタンマウスへの不満から生まれたアイデア」についてお話しします。

長年の多ボタンマウス愛用者としての実感

何を隠そう、開発者である私自身、長年にわたる多ボタンマウスのヘビーユーザーです。これまで様々な製品を試してきました。

特に、Snugon MO1の開発直前までは親指側側面に12ボタンが付いているタイプの多ボタンマウスを4年以上愛用していました。

※画像は特定のメーカーのマウスを指すものではありません。

正直なところ、最初はボタンの多さに戸惑い、使いこなすまでに少し時間が必要でした。しかし、一度その便利さに慣れてしまうと、もう通常のマウスには戻れないほどの魅力を秘めています。ショートカットキーをマウスボタンに割り当てることで、キーボードに手を伸ばす頻度が劇的に減り、作業効率が格段に向上するのです。

従来の多ボタンマウスが抱える課題

多ボタンマウスの魅力にハマった私は、「もっと使いやすく、もっと多くの機能を直感的に扱えるマウスは作れないか?」と考えるようになりました。

同時に、この素晴らしいデバイスが、主にMMO(多人数&同時参加型オンライン)ゲーマー向けの製品として認識され、一般的なデスクワーカーにはあまり普及していない現状があり、非常にもったいないと感じていました。多ボタンマウスは、複雑なコマンドを駆使するゲーマーだけでなく、日常的にPCで作業を行うすべての人にとって、革命的なツールになると感じていました。

普及を難しくしている要因は確かに存在していました。それは、私自身も不満点としてずっと感じていたものです。
従来の多ボタンマウスが共通して抱える問題はいくつかあります。例えば、ボタンの押し分けが難しい、押し間違えが起きやすい、特定のボタンがそもそも押しづらい、などです。
これらの問題を引き起こしている大元の原因は主に2つだと思いました。

1. ボタンが1箇所(主に親指側面)に密集しているため

多くの本格的な多ボタンマウスでは、親指が位置する側面に、多数の小さなボタンが密集して配置されます。マウスの基本的な形状を保ちつつボタンを増やすには、スペースのある親指側面に集約するのが合理的であり、内部構造をシンプルに保ちコストを抑える上でも理にかなっています。しかし、多くのボタンが1箇所に集まるため、押したいボタンの特定に時間がかかりますし、押し間違いも起きやすくなります。

2. 一部ボタンが指から離れた場所に配置されてしまうから

親指にボタンを集約している場合、すべてのボタンに親指が触れている状態ではないため、「この機能はこのボタン…」と、目的のボタンを指で探す動作が必要になります。
マウスによっては、左クリックの左側に追加ボタンがあるタイプも同様で、ホームポジションである左クリックから指を移動させたり、ひねったりする動作が伴います。
押しにくい場所にあるボタンは、結局使われなくなってしまうことも少なくありません。

「同時押し」機能の限界

さらに、これらの問題は、多ボタンマウスの可能性をさらに広げる「同時押し」機能の活用にも制限を生みます。

多ボタンマウスにはシフトボタン (呼び方はメーカーによって異なります) という、押しながら他のボタンを押すことで、通常とは別の機能を実行できるという便利な機能が備わっていることがあります。これはレイヤー機能や同時押し機能とも呼ばれます。これにより、マウスに搭載できる機能数は、ボタンの物理的な数を大きく超えます。

しかし、親指側面に密集したボタン同士を正確に同時押しするのは、手の構造上非常に困難です。結果として、「シフトボタン(多くは薬指や右クリックに割り当てる) + 親指ボタン」という組み合わせが主となり、割り当てられる機能数は実質的に30程度に留まっていました。

ボタンの配置を根本から見直せば、もっと多くの同時押しが可能になり、マウスで実行できる機能数は飛躍的に増えるはずです。単純計算ですが、12個のボタンがあれば、その同時押しの組み合わせは78通りにもなります。

Snugon MO1の着想:「5本の指すべてにボタンを」

これらの課題、つまり「ボタンの密集」「ボタンが指から離れている」を解決するために生まれたのがSnugon MO1の基本アイデアです。

「5本の指すべてに、それぞれボタンを割り当ててみてはどうか?」

具体的には、各指に2つずつボタンを配置します。

  • 1つは指先で押す用
  • もう1つは第二関節付近(親指なら第一関節)で押す用

この配置により、少なくとも10ボタンは常に担当する指の特定箇所に触れている状態になります。これにより、

  • ボタンが特定箇所に密集しないため、一つ一つのボタンに適切なサイズと間隔を持たせられる。
  • マウス上でボタンを探し当てる必要がなくなり、直感的に目的のボタンを押せる。
  • 5本の指で押し分けるため、理論上、同時押しの組み合わせが大幅に増加する。

という、従来の課題を解決する道筋が見えました。

アイデアを実現するまでの開発ハードル

アイデアは閃きましたが、これを実現するには大きなハードルがあることも予想されました。

ハードル1. 持ち上げ時の誤操作リスク

本来マウスを保持するために使っていた親指、薬指、小指にもボタンを配置するため、マウスを持ち上げる際に意図せずボタンを押してしまうリスクがありました。
全てのボタンが誤操作なく、かつ自然に持ち上げられる形状を実現する必要がありました。

ハードル2. 立体的なボタン配置の実現性

5本の指それぞれにボタンを設けるということは、マウスの上面だけでなく側面にも、立体的にボタンを配置する必要があります。これは従来の平面的なボタン配置とは異なり、設計・製造上の難易度が格段に上がることが予想されました。

幸い、私は趣味で「自作キーボード」(基板設計やファームウェア開発から行うキーボード製作)にハマっていた経験がありました。その界隈では、キーボードにマウス機能(ポインティングデバイス)を組み込む試みも存在し、QMKファームウェアのようなオープンソースの力を使えば、技術的に不可能ではないだろう、という見込みはありました(もちろん、決して簡単な道のりではありませんでしたが)。

こうして、「究極の多ボタンマウス」を目指すSnugon MO1の開発プロジェクトはスタートしました。


今回は、Snugon MO1が生まれるきっかけとなった、従来の多ボタンマウスへの課題意識と、それを解決するための基本的なアイデアについてお伝えしました。

第3章では、試作と試行錯誤の過程について詳しくご紹介します。

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